盛岡から直接出ているJR在来線としては、西の秋田方面へ延びる田沢湖線と、東の三陸海岸へ至る山田線の二本が存在するが、この二本は実に使い勝手が悪い。まずは田沢湖線。秋田新幹線「こまち」が上下ともにほぼ一時間に一本程度走るという幹線級の地方交通線であるものの、岩手・秋田県境の人影皆無な山中を行く赤渕から田沢湖にかけての区間は、極端に普通列車が少なくなっている。18きっぷの旅人が秋田側へ抜けようと思えば、盛岡5時22分発、14時10分発、16時03分発、18時05分発の四本の普通列車のうちのどれかに乗らなければならない。山田線のほうはもっと寥々としている。この山田線敷設に尽力したのは、盛岡が生んだ平民宰相の原敬である。大正年間の当時、「人も住んでいない山の中に鉄道を敷いて、総理は山猿でも乗せるおつもりか」との野党議員の国会質問に対し、原は「鉄道営業法によりますれば、猿は乗せないことになっております」と答弁した。実際のところ、山田線が北上盆地を貫くあたりは地勢に凄味があって、深山幽谷の原生林には秘境の風情すら漂っている。
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